そして青空は永遠に晴れたまま。

奇跡の2.5次元役者・浜尾京介の芸能活動復帰をのんびり待機中。

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大変ご無沙汰しておりました。約2ヶ月ぶりの青空本編完全ネタバレ感想、その10です。物語は遂に今作一の見どころと言っても過言では無い場面、託生vsギイの愛の闘い・第2ラウンド突入です。



これまでの感想はこちら。→ 【その1】 【その2】 【その3】 【その4】 【その5
その6_a】 【その6_b】 【その6_c】 【その7】 【その8】 【その9




まずはお約束の長ーい注意書きから。
駄目だなって思ったら、即引き返して読まないでください。




※映画版『あの、晴れた青空』の完全ネタバレになります。
※映画化されていない他の原作エピソードも遠慮無くネタバレします。
※映画撮影時のメイキング的なエピソードも随時盛り込みます。
※映画版青空に関係無い話題にも必要があればどんどん脱線します。
※原作・映画版ともにギイタク至上の主観的感想です。
※あくまでも根本的には腐女子が書く感想です。お察しください。
※なので、ギイタクのラブシーンは当然ですが大好物ですw




こちらの【青空あらすじまとめ】の流れに沿って感想を書いていきますのでよろしければご参照ください。






(22)
一年前の回想が終わって、時間軸は現在、場所は270号室です。託生と三洲が部屋で各々時間を過ごしています。託生は机で教科書を開いていますがその顔は暗く沈んでいて、人間接触嫌悪症時代のトゲトゲしさを彷彿とさせる表情です。ドアをノックする音がすると託生はさらに険しい顔になります。その向こうにいるのが誰なのか薄々予想がついていたのでしょう。それは無意識に託生の願いであったのかもしれません。託生の様子がおかしいことに三洲も気づいていたんでしょうね。「俺が出る」と託生を制してドアを開けます。そこにいたのは、勿論ギイ。託生はギイの姿を認めると、ギリッと睨み付けて即視線を逸らし、ギイの存在など無視して手元の課題に集中している素振りをみせます。そんな託生をみて三洲はギイに「今夜はご機嫌が悪いらしい。またにしたらどうだ」とやんわり追い返そうとしますが、ギイは必死です。三洲に2つめの借りを作ってまで託生と二人きりで話そうとします。ただ、ギイ自身まだこの時点では自分のしたことがどれだけ重い約束違反だったのかについて認識が甘い節があります。事の成り行きをきちんと言葉で説明すれば、心から謝れば託生はきっと許してくれる…そう思っているんじゃないかと感じられるんですよね。


ところが託生はギイになにかしらの言葉を発することすら許さなかった。謝罪はいい、言い訳も説明も要らない、と、ギイからのあらゆる言葉を淡々とした口調で拒絶したんです。これにはギイも困惑したんでしょう。大会に出場しろよと言われて、「わかった。大会には出場する。だが、早々に負けてお前と出かける」なんて口にしてしまいます。これを聞いた託生は、遂に「できるもんか、そんなこと!!」と声を荒げて怒りを露わにするのです。頭の良いギイが妙な負け方をしたら八百長かと思われる。クラスの皆にも迷惑が掛かるし、裏ではトトカルチョも行われているのに本命のギイがあっさり負けたらギイ自身の信用もガタ落ちだ、と。託生のなかではこの時点で、スヌーカー大会にギイが出場しないとどうなるのかのシミュレーションがもうすべて行われているんですよね。そして結論も出ている。ギイは出場した方がいいと思う。だからこそ、初戦でわざと負けて自分と出かける、なんてギイの自分勝手な言い分に怒りを隠せなかった。でも託生があからさまに声を荒げたのは最初の二、三言だけで、どんどんトーンが落ちていくんですね。託生はもうすでに諦めているんです。ギイと兄の墓参りへ行くその約束を、託生は諦めている。ひとしきりギイを責めたあと、託生が言う「……もういいよ。一人で行ってくるから」このときの表情が、なにもかもを諦めて生きていた頃の託生なんです。託生は兄とのことが発覚して以来、なにもかもを諦めることで自分の心を守ってきた子です。この、「なにもかもを諦める」、は今作のキーポイントになっていると思います。(9)の回想に入る前のナレーションでも、このあと終盤の重要シーンでもこのフレーズが出てくるんですよ。


諦めた表情の託生に「帰れよ」と言われてもギイは、初戦で負ける、約束する、11時まで待てないか、としつこく追いすがります。挽回のチャンスをくれないか、と。託生はそれを悉く断ります。そして口にしたのが、「許せないんだよ、ギイのこと」、という、重い重い一言。「どれだけ必死に努力しても、許せないんだよ、ギイのこと」、そう言われて、ギイはようやく託生とのこの約束を破ってしまったことの真の罪深さを思い知ったんだと思います。それはこの続きのシーンを観るとよくわかるんですが、ここでは託生の言葉に衝撃を受けたギイの表情を見せないのがこれまた憎い演出ですね。許せないと託生に言われて、ギイにはもう次の言葉がありません。「託生の言い分の方がどうしたって正しい。オレが悪かったんだ」、とそう言うのがこのときのギイの精一杯。そのまま背を向けて部屋を出ようとしますが、託生が嗚咽を堪えて息を吸い込むのを聞いて一瞬足を止めます。でもギイはもう振り向けません。「ごめん、託生」、それだけを言い残して去っていきます。ドアが閉まる音がすると、腕で顔を覆うようにして隠していた託生がそっと顔を上げます。そのときの、託生の表情といったら!!!!


もうね、本当に絶品です!!!! 表情というよりも目ですかね。横井監督もおっしゃっていたように、このシーン、この表情、浜尾京介という役者の真骨頂といってもいい。彼の黒目がちな瞳が言葉よりもはるかに雄弁にこの場面での託生の感情を語っています。大きな目いっぱいに今にも溢れそうな程涙を溜めて、その場にはもういないギイの姿をみつめているんでしょうね。せつなさと愛しさとやりきれなさと(なんか昔こんなタイトルの歌あったな)あらゆる託生の感情が、ここの浜尾京介の表情、特にその目に表れている…凄い役者ですよ本当に。この託生の表情、青空本編中で一番印象に残ったと言うひとも多いんじゃないですかね。大ちゃんも東京試写会でこのシーンは思わず2回巻き戻して観たって言っていたぐらいのものすごい表情ですからね(笑)。ここの託生の涙に濡れた瞳はとにかく必見です!!!!



私はこのシーンを、ゼロ番の夜に続いて「託生とギイの愛の闘い」と呼んでいるんですよ。ゼロ番の夜が甘い甘い愛の交歓ならば、この270号室の夜は苦くせつない愛の試練。まさに役者二人、浜尾京介の託生と渡辺大輔のギイによる〝愛〟の競演ガチバトルです。この場面で一方的に責めているのは託生ですが、それを静かに受け止めるギイの押し殺した細かい演技も見どころです。また、ここまで感情露わに激高した託生というのは本当に珍しいですよね。だからこそ非常に新鮮で思わず息を呑む程見応えがありました。託生の心の最奥、コアの部分に封じられている兄の存在に触れるということが、どれだけ重い意味をもつのか、それをギイとともに観客はこのシーンでまざまざとみせつけられたことでしょう。そしてトドメがあの託生の潤んだ目ですからね。そりゃもうココロ鷲掴みでギュウウウウ〜ですよ!!!!


青空が虹色や美貌と明らかに違うのは、託生の事情によってギイが振り回されるという点です。これまで託生はずっとギイ自身やギイに関わる事情によくわからないまま振り回されることで苦しみ悩み嫉妬しせつない想いを味わってきました。映画版の虹色も美貌もそうですよね。でも青空は違う。託生の抱える最大の傷に踏み込むことでギイが大火傷してしまう話です。託生に振り回されて必死になるギイの姿というのも実に新鮮ですよね。観ている側としては虹色とも美貌ともまた違う感覚を覚えるのではないでしょうか。託生いいぞもっとやれ的な(笑)? だってね、虹色も美貌もギイの自己完結っぷりに託生は散々振り回され続けたんですもんね。ギイを振り回せるようになった、もしかしたらそれだけ託生が強くなった証しなのかもしれません。




(23)
300号室に戻ってきたギイ。閉めたドアにもたれ掛かりながら脱力したように崩れ落ちます。それと同時に放り投げられる眼鏡。ギイが眼鏡を外すという行為については【その6_a】で語りましたが、ここでもそれは同じで、ギイが自分の感情を晒け出すときの無意識の合図になっているんですね。何度もドアを殴りつけ、頭をそこに打ち付け、八つ当たるようにしながら自分自身を痛めつけ責めるギイ。ここで先程の270号室での場面がフラッシュバックします。託生に「許せないんだ、ギイのこと」、そう言われたとき、さっきは映されていなかったギイの表情をここではカメラが捉えています。許せないと言われたその瞬間、ギイは目を瞠って雷に打たれたかのようにあからさまにショックを受けているんですね。そして固く目を閉じて苦悶の表情を浮かべながら、自分が取り返しのつかない約束違反をしてしまったことを悟るんです。許せないと言った託生の言葉が頭のなかで繰り返されるんでしょうね。どれだけ自分を痛めつけても、約束を裏切られた託生の心の痛みには及ばない。どうやって償ったらもう一度託生に許してもらえるのか、もう一度があるのかすらわからない。そしてギイは…最後には、両手両足を投げ出して放心したように脱力してしまいます。諦めたかのようにもみえます。この場面は原作には無い映画版のオリジナルです。美貌でもそうでしたが、映画ではギイの苦しみやせつなさといった感情を補完することで、観客の感情移入をしやすくしていますね。


このシーンのギイをみて、おそらくはギイもこうやって苦しいことを自分一人で抱え込んで最後には諦める子どもだったんじゃないかなと思いました。勿論ギイが望んで叶えられないことなどこれまで生きてきてほとんど無かったのかもしれません。それでも御曹司故の特殊な苦しみを周囲に悟らせないで自分だけで解決する、それが自分の生まれ持ったさだめだとある意味諦めて生きてきた子だったのかもしれないと、この場面のギイから感じたんですよね。ギイのあの自己完結っぷり、すべてを背負い込もうとする自己犠牲精神は、彼がそういう境遇で過ごしてきたんだとしたら、わりとすんなり納得出来るような気がするんですよね。託生とギイは、諦めることで生きてきたという、よく似た傷を抱えていた二人だったのかな、と。君は僕に似ているなんて歌もありましたが、まさにそういう二人だからこそ惹き合ったのかな。そんな託生とギイが、唯一諦めなかったものがお互いの存在なのかな……って、そう思いました。


監督始め脚本制作スタッフがどういう意図でもってこの場面を今作に入れたのか、正解は勿論私にはわかりません。知る術もありませんしね。でも大ハズレでは無いと思うんですが。観たひとそれぞれが受け取った感情すべて正解でいいんでしょうね。国語の問題みたいだ。




心がすれ違った二人の重くて苦しい場面がまだ続きます。小刻みにがんばります。