そして青空は永遠に晴れたまま。

奇跡の2.5次元役者・浜尾京介の芸能活動復帰をのんびり待機中。

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青空本編完全ネタバレ感想その18です。永遠の愛を誓うラストシーン。


これまでの感想はこちら。
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その17





まずはお約束の長ーい注意書きから。
駄目だなって思ったら、即引き返して読まないでください。




※映画版『あの、晴れた青空』の完全ネタバレになります。
※映画化されていない他の原作エピソードも遠慮無くネタバレします。
※映画撮影時のメイキング的なエピソードも随時盛り込みます。
※映画版青空に関係無い話題にも必要があればどんどん脱線します。
※原作・映画版ともにギイタク至上の主観的感想です。
※あくまでも根本的には腐女子が書く感想です。お察しください。
※なので、ギイタクのラブシーンは当然ですが大好物ですw




こちらの【青空あらすじまとめ】の流れに沿って感想を書いていきますのでよろしければご参照ください。






(42)
兄が眠る場所に辿り着いた託生とギイ。墓前にはすでにお参りに来た両親の花束が供えられていました。それを確認して託生はしゃがみこんで腕に抱えていたカサブランカの花束を両親の分に添えるようにしてそっと置きます。すこし遅れてギイも託生の横に屈みこみ初めての対面となる託生の兄の墓をみつめます。花を供える託生の顔はもう迷いも戸惑いも無く凪いでいましたが、ギイの方はどこか複雑そうです。そして二人は手を合わせ目を閉じ、それぞれ故人に祈りを捧げます。穏やかに手を合わせ祈る託生にオーバーラップする一年前の託生の姿。花束を抱えたまま一人立ち尽くししばらく墓をみつめていた託生は、ようやくしゃがんで花束は供えたものの手を合わせて祈ることは出来ず、そのまま両手で膝を抱え、兄の眠る場所を幼ない子どものような表情でただみつめているだけでした。そして再び一年後の現在。兄の前で手を合わせて祈る託生の顔はとても安らいでいます。もう一人じゃないから。傍にギイがいてくれるから。その愛でこんなにも満たされているから。だから、「もう大丈夫」……そう兄に報告しているだろう託生の横顔を、いち早く祈り終えたギイが真摯な視線でそっとみつめます。その熱いまなざしに託生は気づきません。託生の祈りが終わるのを見届けて、もう一度墓に目を遣ったギイはなにかを決意したかのようにゆっくり立ち上がります。それをみた託生も倣うように立ち、一度見つめ合った二人はゆっくり歩き出して兄の墓所をあとにするのでした。




兄の墓前で託生とギイが手を合わせる場面は原作にも描写の無い映画オリジナルです。それを一年前の託生がはじめて兄のお墓参りをするというジュンプラのエピソードと重ねて対比させながら描いているのが実に上手いというか、過去と現在の相乗効果でうるっと泣けること必至の印象的な場面となっています。一年前の託生が一人で兄の墓前に佇んでいる様子には本当に胸が痛くなる。原作では兄の死に立ち合った看護士にその死に際の様子と言葉を聞かされ、兄が自分を庇わなかったあの日のことを本当は悔いていたと知ったことで、手を合わせて兄の冥福を祈ることが出来たわけですが、映画版では一年前の託生は兄の墓前で手を合わせないんですね。手を合わせる代わりに自分自身を抱き締めるかのように両手で膝を抱えて、ただただ兄の眠る場所をじっとみつめることしか出来なかった。その儚げな表情はあの日以来心の時を止めてしまった子どものままの託生にもみえて……この託生の姿を観たとき強烈に「ギイ、託生が一人でこんな顔をしてるよ!! 一人にしないで傍にいてあげてよ!!!!」って思ったんです。そうしたら現在の託生のとても穏やかに安らいだ表情が再び重ねられて……ちゃんと、託生の傍らにはギイがいるんですねいてくれるんですね。嗚呼ギイがいる……って、今はギイが託生を一人にしたりしないって、そんなふうに思えて、「よかったね託生、ギイがいるね」って観てる側も安堵するし、ギイの愛に満たされた今の託生の境遇を素直に泣いて祝福したくなるんです。それこそスタンディングオベイションで。そんな心理的効果が、一年前と現在の託生が墓前でどんな表情をするのかの対比にはあるんじゃないかなあ。



それからこのシーンについて、私が託生よりも心を揺さぶられるのが実はギイなんです。先に祈り終えたギイが、祈り続ける託生をじっとみつめていますよね。このギイで、試写会と映画館合計37回観たうちの9割方はブワッと泣かされました。私の泣きスイッチが入るのは確実にここ!! 祈っているときからとても真剣でどこか神妙な顔をしているんですが、そのあと託生に向けたその視線!!!! カメラがぐるっと回り込むようにして撮っているので、角度的にギイの表情ははっきりとみえないのに、それでもギイのなかにある託生への想いの強さがね、あの横顔からでもビシビシ伝わってくるんです。目は髪で隠れているけど、その視線が託生への愛情に満ち満ちているのがわかるんです。それと同時に、このときギイは祈る託生をみつめながら誓ったんだと思うんですよね。「託生、愛してる」「絶対に手放さない」「どんなものからも護り抜く」、そして……「たとえ兄貴でも、生きていても、死んでても、誰にも託生を譲る気はない」、と。後者の部分は原作「夕立」で実際にあるギイの台詞です。本当はこの台詞の場面も映像で観てみたかったのですが、ジュンプラからの作品全体の流れであらためて考えてみると、ここの原作のやりとりを入れたらちょっとギイの想いがくどいというか、あの独占欲はシリーズとしての大団円エンディングへ繋がるさわやかな感動を邪魔するかもなあって思ったので。うん、やっぱり本編の選択がベストですよね。


ちなみにメイキングではこのシーンの撮影時に大ちゃんがこんなことを言っていましたね。(以下引用)「安らかに的なことも言ってるかもしれないけど、逆に弟さん貰っていいですか、と」でもこの解釈は個人的には違う気がするんだなあ。原作の「夕立」を読んでいたら多分そういう解釈にはならなかったと思う。ギイなら尚人(託生の兄)に「(託生を)貰っていいですか」なんて訊かないでしょ。尚人に許可なんて求めないですよ。だって託生を巡るライバルだもの。どちらかといえば、「託生はオレが貰うから。お前が刻みつけた傷はオレが一生かけて癒すから。二度とお前には渡さない」、といった宣戦布告なんじゃないかと思います。ギイの独占欲全開な感じで。それは上記で触れた原作「夕立」のギイ台詞にもしっかり表れていますよね。


話がすこし逸れましたが、とにかくこの場面、託生をみつめるギイの真摯なまなざしに私は号泣するのです。ちょうどこのあたり、ギイが目を開けて託生をみるあたり(1:24:21〜)から、BGMに流れている共犯者のテーマのアレンジがちょっと変わるんですね。敢えて外した不協和音のような音がすこし遠くで鳴り響いている。残響のようなものがきこえてくるんです。これは今まで使われたことの無いこの場面だけのアレンジバージョンです。ギイのまなざしにかぶさる残響は、ギイが秘かに誓った託生への永遠の愛、その儀式に響き渡る教会の鐘の音色のようにも私にはきこえました。だからやっぱりこの残響でも泣けちゃうんです。



ちょっとした小ネタとしては、墓前に供えられているお花ね。これ、両親の分がオレンジ色のガーベラで、託生の分が白いカサブランカ、一年前はかすみ草、とすべて原作通りだったことに「ほう!」と感心しました。こういう原作既読者向けのディテイルにもちゃんとこだわってくれているとやっぱりうれしいです。それからしゃがんで手を合わせるとき、託生は終始ぴったり膝を閉じているのにギイはガバッと男らしく開いてるんですね(ちょっとサラリーマンの休憩みたい)(コラ)これぞさすがのギイタククオリティだよなあって思いました(笑)。うん、このバランスだよね。


 
(43)
歩き出した二人。行きと同じくギイがすこし前を歩き、その半歩後ろから託生がついていきます。前を向いたまま託生を見ずにギイがその手をとりました。突然手を繋がれ驚く託生にギイが告げます。「来年もまた来よう」「えっ?」一瞬なんのことかわからない託生にギイは、来年もその次の年も、また一緒に来よう、と言いました。墓参りのことだと理解した託生は戸惑います。来年は、自分たちはもう祠堂の学生ではない。アメリカに家族もいて世界的企業の御曹司であるギイの立場では、日本に来ることさえままならないのかもしれない。そんな託生の気持ちを察して、力強くギイが言うのです。「世界のどこにいても、オレは来るから」その言葉が嘘で無いとわからせようと、ギイは繋いだ互いの手と手の指をしっかり絡め合います。「だからそのとき、託生が両親とここに来られるようになっていたとしても。それでもオレと一緒に来よう、託生」 キョトンとした顔でギイの言葉を聞いていた託生にやっと視線を向けみつめるギイ。そんなギイをみて託生はギイが本気なのだと信じたのでしょう。託生はただ驚くだけではない今にも泣きそうな表情に変わっていきます。ギイはさらに確かな言葉にして誓うのです。「来年も、再来年も、それから先も、ずっと、毎年オレはお前とここに来る」……それは、ギイが誓う託生への永遠の愛の約束。同時に二人でないと叶えられない約束でもあります。ギイの誓いに託生は「うん」と、涙を堪えて頷いてみせたのでした。手を繋いだまま、託生とギイは並んで歩いていきます。地面をしっかり踏みしめながら寄り添った二人の後ろ姿がすこしずつ遠ざかってゆき……エンドロールへ。



いよいよ託生とギイの愛が〝永遠〟になる場面です。先のシーンに続いて私の号泣ポイントでもあります。この場面についても、大ちゃんが横井監督に演技プランを提案してOK貰っているところがすこしだけメイキングに収録されていますね。結局のトコロ、私は浜尾京介演じる葉山託生をこの上なく愛する浜尾ファンでありながら、彼らの集大成となった青空では渡辺大輔演じる崎義一にとことんまで泣かされたワケですよ。特にこの台詞、「来年も、再来年も、それから先も、ずっと、毎年オレはお前とここに来る」……これが!! もう!!!! これを聴くとホント駄目なんですよ。涙腺崩壊なんですよ。永遠がみえたんです本当に。この大ちゃんギイの台詞で、作品世界での託生とギイの〝永遠〟がみえたんです。来年も再来年も、それから先もずっと、託生とギイは毎年一緒にお墓参りに来るんだって思えた。彼らの愛がずっと続くと信じられた。このシーンだけは託生の気持ちにシンクロして、「うん」ってギイに頷きたくなりました。あんな可愛い声出してはとても頷けませんけどね(笑)。



あと裏話ですが、初稿と思われる台本ではこのシーンがラストカットになるんですね。でもギイに原作「夕立」通りの台詞を言わせていません。以下、台本から引用してみます。



 ギイ「なあ、託生。また来年も来ような、墓参り」
 託生「ギイ……(嬉しくて涙)ううん、来年もじゃないよ。その先もずっとずっと……」
 ギイ「ああ、ずっと一緒にな」
 託生「……うん」



こーれーはーあかん。これは原作的にみて「あり得ない」です。脚本家さんには申し訳無いけど原作を表面的になぞった人間の書いた仕事ぶりだわこりゃ。あのさーこれ託生に言わせてどうすんだよ。これは託生が言える言葉じゃないんですよ。託生がギイにそんな約束をねだれるワケがない。「来年も、再来年も、それから先も、ずっと」と、ギイの口から託生へ誓うことになによりの重い意味があるんです。これは二人のこの先、将来を約束する……いわば、プロポーズでもあるんですからね。それってプロポーズみたいというと美貌ラストの共犯者の誓いが思い起こされます。あのときの「どんなときも傍にいてくれ。オレの共犯者になってくれないか」というある種抽象的で刹那な誓いを、より確かで現実的なビジョンを見据えた上で託生との愛を貫くことに対して完全に腹括ったギイが誓ったのがこの「来年も、再来年も、それから先も、ずっと、毎年オレはお前とここに来る」なんだと私は思うんです。それは「それから先」が無い託生の兄に対する意志表示でもあったかもしれません。つまり、絶対に託生からは言っちゃ駄目な言葉なんですよね。託生はギイに自分から約束を求めたりはしない。


台本ではこうなっていたワケですが、実際出来上がってきた作品ではちゃんと「夕立」ラストの部分を忠実に描いてくれていました。大ちゃんが台詞確認をしているような様子がメイキングにあったのでもしかしたら撮影現場で差し替えがあったのかな? 勿論その差し替えは、横井監督による判断だと私は信じています。2011/04/07付け記事において、奇しくも私はこの場面の重要性を訴えているんですね。この映画版青空が託生とギイの〝永遠の愛〟となるためには、「世界のどこにいても、オレは来るから」「来年も、再来年も、それから先も、ずっと、毎年オレはお前とここに来る」この台詞をギイに言わせて、託生がそれに頷いてこそ、〝永遠の愛〟……その誓い、は完結するのではないかと。だから映画版青空にこの台詞があるとわかったとき、そしてそれがおそらくは監督判断で加わったのであろうと知ったとき、本っ当に、本当にうれしかったです。自分の想いをすべて汲んでもらえたような気がしました。



お馴染みとなったシリーズテーマ曲が流れるなか、託生とギイはぴたりと寄り添いながら同じ歩調で並んで歩いていきます。6月設定のはずなのに枯れ葉を踏む音がするのはこの際もうつっこんではいけません(笑)。彼らの物語のエンディングに、その余韻に、ただただどっぷり浸りましょう。今回、虹色から通してはじめて画面が暗転する前にテロップが流れてきますね。二人の後ろ姿が映された状態で一番最初に下から上がってくる「浜尾京介」という文字……嗚呼、これだよ。これが映画タクミくんシリーズなんだよ!! 胸がスッとする思いでした。ちょうどこの名前が真ん中あたりにきたところで託生とギイがコツンって感じで頭を寄せ合うんですね。ここも泣きポイントで涙ドバーッと出てきます。それに続く「渡辺大輔」に広がる安心感と感慨深さ。そう、彼らがいたから成り立った物語だった。彼らはここまで辿り着いた。〝永遠〟がみえた。徐々に遠ざかる二人の姿とともに画面も暗転して消えていくのが特別な余韻をもたらしますね。




嗚呼これがラストと言ったのに終わりきらなかった……
あとはエピローグの一場面を残すのみ。これは物語の余韻みたいなものでもあるので、次こそ本当にラスト。青空全体の感想総括も出来ればやりたいです。