そして青空は永遠に晴れたまま。

奇跡の2.5次元役者・浜尾京介の芸能活動復帰をのんびり待機中。

110620

本日、青空余韻休暇。


まずは記憶が鮮明なうちに青空本編あらすじまとめから。これをやらないとどうも私、落ち着いて感想を書けないんですよ(笑)。美貌以来の癖みたいなものでして。あ、ぴゅあは別だけどねー。


1回目のあとの待ち時間に書き出して整理したメモを、2回目3回目の本編で確認したので物語の流れはあっていると思います。台詞&ナレはかなりのうろ覚え故に原作を読み直して一部引用しています。
(20時追記。青空あらすじを一つの記事にまとめなおしました)



以下、閲覧上の注意。



※完全本編ネタバレになります。各自判断で回避してください。 











(1)温室
 託生がバイオリンの練習をしている。
 (楽曲はグノーの『アヴェ・マリア』)


 託生ナレーション
  最近一人でいる時間が増えた
  ギイとかわしたあの約束の日から――


 美貌・共犯者の誓いのあのナレーションが流れる



(2)学校・正面ホール階段
 相変わらず一年生に囲まれ階段を上るギイ。
 それをみつけて避けるように一人反対側の階段を下りる託生。
 すれ違ったあと、託生はギイの後ろ姿をせつなくみつめる。




〜OPタイトル 『タクミくんシリーズ あの、晴れた青空』〜




−6月8日 日曜日−


(3)270号室 託生と真行寺
 雨の気配に気づく託生。
 真行寺との会話。
 「別にぼくとギイはつきあってるとかそういうんじゃないし」
 「葉山さんは相変わらずギイ先輩のこと好きなんだろうなって」
 三洲のことを話す二人。雑誌を持って部屋を出ていく真行寺。
 そこへ託生に電話の呼び出し。



(4)寮・公衆電話
 母からの電話を受ける託生。
 15日のことを振られて、「無理なんだ、お母さん」


 <回想>一年前・祠堂学院のバス停前
  託生を兄の墓参りへと送り出すギイ。
 「生きていたら最高のライバルだったな」


 託生ナレ
  兄の命日まで、あと一週間……



(5)300号室
 ギイが雨の打ち付ける窓から外をみつめている。
 その脳裏に浮かぶのは託生のことばかり。


 <回想>一年前・305号室
  ベッドの上で後ろから託生を抱き締めるギイ。
  お互いに裸のままの二人。
 「恨んでるのか、今も」
 「うん……多分」




(6)寮・ロビー 託生と赤池
 ギイと二人で会いたいと赤池に相談する託生。
 「葉山もギイもお互い意識しすぎだぞ」
 明日温室にギイを行かせると言って赤池立ち去る。
 「ありがとう赤池くん」



−6月9日 月曜日−


(7)3-C教室
 簑巌によってスヌーカー大会の説明が行われる。
 「実施日は6月15日日曜日」
 日程を聞いて、表情をすこし変える託生。



(8)温室
 託生がギイを待っている。そこへ突如現れる真行寺。
 「大変だ。リンリンのことがバレた!」
 三洲の魔の手から拾い猫のリンリンを守ってくれと言われる。



 再び一人、待つ託生。
 温室の扉の開く音とともに、樹木の陰からギイの姿。
 眼鏡を外しながら託生をみて微笑むギイ。
 託生は思わず駆け出して勢いよくギイに抱きつく。


 「もう来ないかなあって、無理かなあって、諦めてた」
 「そんなに待たせたか?ごめんな、託生」
 ひさびさに会えたよろこびを分かち合うようにそっとキスをする二人。


 「ギイ、あのね……」
 託生がギイに言いかけたところへ、大橋先生が現れる。
 即座に離れる二人。ギイは表情もサッと変えて託生から距離を置く。
 ギイはなにか言いたそうに託生をみつめながら、温室を出て行く。



 リンリンを腕に抱いて登場する大橋先生。
 「崎が葉山くんになにか言いたそうだったからさ」



(9)寮・郵便受けの前
 270号室の郵便受けに母から託生宛の手紙が届いている。



 <回想>一年前・郵便受けの前(同じ場所)
  305号室の郵便受けから母の手紙を受け取る託生。
  その封筒を握り潰す。


 託生ナレ
  あの頃の僕は僕が嫌いだった
  母さんも父さんも兄さんも嫌いだった
  自分の心を守るために必死でバリケードを作っていた――



(10)二年前・1C教室
 託生が帰ろうとしているとクラスメイトが絡んでくる。
 「図書当番サボるつもりかよ」
 「葉山みたいなのがいるだけで迷惑なんだよね」
 肩に触れられて、咄嗟にそれを払い除ける託生。
 一番後ろの席に座って様子を伺っていたギイが思わず立ち上がる。
 託生は逃げるように教室から出て行く。


 ギイと赤池が託生のことを話す。
 「あの人間嫌いでよく全寮制の学校に来たよな」
 「葉山は人間が嫌いってワケじゃない気がするんだ」


 託生ナレ
  あの頃からギイだけはぼくのことをわかってくれていたのかもしれない――



(11)一年前・305号室
 夜、それぞれのベッドで横になっている託生とギイ。
 「愛してるって、どういう意味かわかってるのか」
 想いは繋がっていても、いまだ身体は繋がっていない。
 そういう意味でギイの気持ちはわかっていると答える託生。
 「わかってるのになにも変わらないのか? 託生はなにも変わっちゃいない」
 「十分変わったよ!! だってギイのことを……っ」
 愛してる、が言えない託生。まだギイには言えない秘密があるから。



(12)270号室 託生と三洲
 「俺に対して後ろめたいことでもあるのか」
 託生はリンリンのことをあっさり明かす。
 リンリンをめぐる託生と真行寺の接近が気になる三洲。
 「三洲くんがぼくと真行寺くんのこと、気にしてるなんて意外だね」
 「そりゃ、少しは気になるさ」
 「恋人でもないのに?」
 「惚れてなくても、あいつは俺の所有物だ」
 真行寺の気持ちを素直に伝えてくる託生に三洲も負ける。
 「まいったね、葉山。崎がつきあってるだけはある」



(13)270号室
 母からの手紙と同封された切符をみつめている託生。
 「……いいか、もう」
 思い切ったように立ち上がり、託生は部屋を出て行く。



(14)300号室・ドア前 託生と一年生
 寮の階段を上り、ギイのゼロ番にやってきた託生。
 ドアの前で躊躇していると、一年生が声を掛けてくる。
 「崎先輩なら在室ですよ」
 勝手にノックまでしてギイを呼び出す一年生。
 出てきたギイはそこにいた託生の姿に驚く。
 「一年なんかにナンパされてんじゃねえよ」
 そんなんじゃないと慌てる託生を笑って部屋の中に押し込むギイ。



(15)300号室 託生とギイ
 室内には先客の簑巌がいた。
 託生をみるなり簑巌は気を利かせて部屋を出ていく。
 二人きりのゼロ番。ギイはさりげなく眼鏡を外し、テーブルに置いた。


 「ここにいていいのかな、ギイ」
 「構いやしないさ。さっきまで簑巌と二人だったんだし」


 ソファーに並んで腰掛ける二人。
 「よく来たな」
 ギイは託生の頬にそっと手を当てる。
 「勝手に来ちゃったこと、怒ってない?」
 「そんなワケないだろ」
 ギイが甘く託生の名前を呼んだのが合図のようにキスをする。
 「いっそこのまま襲っちまおうかな」
 目を閉じたまま、すこし顔を上げてその言葉どおりギイを待つ託生。
 「誘うなよ、託生」
 キスを繰り返しながら、ギイは託生をソファーに押し倒す。
 途中で止めて立ち上がったギイは、帰ろうとする託生をソファーに留め、
 部屋の鍵を掛け、電気を消して託生の前に戻ってくる。


 「ソファーとベッド、どっちがいい?」
 「……どっち、でも」



 美貌のテーマ改め、共犯者のテーマをBGMに
 ひさびさの逢瀬で激しくもつれ合いながら互いを求め合う託生とギイ。



(16)300号室 託生とギイ
 愛し合ったあと、そのままの姿でうたた寝してしまった二人。


 「あれ……? いつの間に眠っていたんだろう」
 すこしふらつきながら気怠そうに身体を起こす託生。
 夜深い雰囲気に点呼のことが気になった託生は部屋に戻ると言う。
 慌てて託生を胸にきつく抱き寄せるギイ。
 「頼むから、せめて今夜くらいオレのものでいろよ」
 せつない響きのギイの懇願に、託生はおとなしく腕のなかに収まる。


 「託生、オレ、お前に話があるんだ」
 日曜の託生宛ての電話が気になっていたギイは相手を確認する。
 「実は、ぼくもギイに話があったんだ」
 「託生、それ、兄貴の件か?」
 驚く託生。踏み込みすぎないよう気を遣いながらギイは核心に触れていく。


 「今年の墓参り、オレも一緒に行かせてくれないか?」
 ギイの腕から離れ起き上がり、膝を抱えて俯く託生。
 「ごめん! やっぱり無理だよな。オレ、お前の家族じゃないもんな」
 ギイは昨日も墓参りのことを言い出したかったが上手く言えなかったと告げる。
 自分こそギイを誘いたかった、と託生も打ち明ける。
 あらためて15日の約束を申し込むギイ、うなずく託生。


 大切なことだから別々ではなくここから二人一緒に出かけようとギイが言う。
 ズルイことをすると託生の兄に叱られそうだから。
 「そんな男に大切な弟はやれない、なんて言われたら、オレ、たまんないよ」
 「そんなこと言わないよ」
 微笑む託生はギイの髪を左手でそっと撫でる。
 ギイの肩に甘えるようにして顔を寄せ、自分の左手をギイの右手に絡める託生。


 託生ナレ
  本当に、いつだってギイはぼくが一番望むものをくれるんだね――




−6月10日 火曜日−


(17)学校・学生課
 日曜の外出許可の申請手続きをする託生。



(18)寮・ロビー ギイと赤池
 七夕の笹搬入について確認する二人。




−6月12日 木曜日−


(19)温室の近くの東屋 託生と赤池
 日曜のスヌーカー大会、その裏のトトカルチョについて赤池から聞かされる。
 「せっかくギイが出るんだから、ヤツに一票入れてやるのも愛情のウチじゃないか?」
 「ギイ、出るの?」
 驚く託生。今度の日曜は二人にとって大切な先約があったはず。
 ギイにスヌーカー大会に出て欲しくないことを言う託生の様子を訝しがる赤池
 「約束したのに……ひどいよ、ギイ」
 「おい、泣いてるのか?」
 「最低」
 泣きながら託生は両手で顔を覆ってしまう。



(20)一年前・寮の郵便受けの前
 母からの手紙を握り潰した託生に兄の幻聴がきこえる。


 〝誰があんな託生を愛してくれるものか〟
 〝お前は卑しい人間なんだ〟


 鼓動が大きく音を立てて託生を追い詰める。
 そこに被さるあの日の母の叫び声。
 〝あんたなんか私の子じゃないッ!!〟


 「誰が? 誰を許せって?」
 廊下の椅子に崩れ込んだ託生をみつけて赤池が声を掛ける。


 「赤池くんは誰かを好きになったことある?」
 確実に一定の距離をとりながら、様子のおかしい託生を伺う赤池
 「どうやったら失わずにすむの?」
 ギイのことを言っているのなら心配要らないと赤池は言う。
 ギイは一時の感情に流されることなく想像以上に葉山のことを想っていると。
 「きみの言うこと、よくわかんないな」
 混乱を深める託生。過呼吸のように息が荒くなり、すがるように必死に言葉を紡ぐ。
 「ギイを失っても生きていけるの? ねえ、どうなんだよ!!」
 そのまま廊下に崩れ落ち、意識を飛ばす託生。



(21)一年前・305号室 ギイと赤池
 部屋のドアの内側で倒れた託生について話す二人。
 その視線の先にはまだ意識の戻らない託生が横たわっている。
 「ギイ、このままじゃまずいだろ」
 託生の酷く追い詰められた様子を目撃した赤池は心配する。
 そんなにヤワじゃないと答えるギイ。
 「オレは本当の葉山託生を知ってるんだ」
 ずっと昔、託生が本当に託生らしい頃の託生をギイは知っている。


 「その頃から、好きだった」



(22)270号室 託生とギイ
 ギイが270号室を訪れる。それを託生は睨み付ける。
 必死な様子のギイに三洲が気を利かせて部屋を出ていく。


 日曜の件について説明しようとするギイの言葉を続けさせない託生。
 すでに諦めたような淡々した口調で託生はギイの言い訳を拒絶する。
 「言い訳も説明もいい。いらない。大会に出場しろよ」
 「わかった。大会には出場する。だが早々に負けてお前と出かける」
 「できるもんかそんなこと!!」
 ギイの自分勝手な言い分についに声を荒げギイを責める託生。


 「もういいよ。一人で行ってくるから」
 話は終わったと言われても諦められないギイは初戦で負けると約束する。
 託生はそれを拒む。11時まで待てないかと言われても託生は撥ね除ける。
 挽回のチャンスをくれと言われてそれすら断る託生。
 「どれだけ必死に努力しても、許せないんだよ、ギイのこと」
 「わかった。託生の言い分の方がどうしたって正しい。オレが悪かったんだ」
 ごめん、託生、と言い残して部屋を去るギイ。
 腕に埋めていた顔を上げ、溢れそうな程に涙を溜めた目でドアの方をみる託生。



(23)300号室
 託生に拒絶され、ゼロ番に戻ってきたギイ。
 ドアを閉めるとそこにもたれ掛かりながら脱力したように崩れ落ちる。
 託生に許せないと言われた。それだけの約束違反をしてしまった自分を責める。
 ドアを殴りつけ、頭を打ち付け、八つ当たるようにして自分自身を痛めつけてみても
 ギイの苦しみと後悔は消えない。託生に償う、その心を取り戻す術がみつからない。
 最後には、両手両足を投げ出してギイは放心する。



(24)270号室 託生と三洲
 戻ってきた三洲。
 すでにギイの姿が無いことをからかってみるも託生の反応がおかしい。
 三洲に日曜日外出することを告げ、パジャマ姿の託生はもう寝ると言う。
 「日曜日、崎と出かけることになっていたとか?」
 三洲の鎌かけにあっさりそのとおりだという反応をしてしまう託生。 
 「ひさしぶりのデートがキャンセルされて、それで葉山不機嫌だったのか」
 「うん、まあ、そんなとこかな」
 おやすみと言って、託生は元気無くベッドに潜り込む。


 託生ナレ
  デートの約束なんてそんな軽いものじゃなかった。
  でも、ギイとぼくのあいだに認識のズレがあったのかもしれない
  ぼくがどんな気持ちでギイを誘ったのか、きっと、わかってもらえてなかった――



−6月14日 土曜日−


(25)学校 学生課
 三洲が日曜の外出許可申請を調べている。
 そして託生の申請書をみつける。



(26)270号室
 夜、雨の打ち付ける窓から悲しげな表情で外を見つめる託生



−6月15日 日曜日−


(27)270号室 託生と三洲
 出かける準備を終えた託生に三洲が電車の時間を尋ねる。
 細かく段取りの確認をする三洲を不思議に思う託生。
 「まだ仲直りしてないのか」
 「仲直りもなにも、ぼくが一方的に怒っているだけだから」
 すこし寂しげに笑う託生に、三洲が告げる。
 今日のスヌーカー大会、その裏で盛り上がるトトカルチョ
 優勝の一番人気は崎だが自分は一票も投じていないと言う三洲。

 

(28)学校・スヌーカールーム
 スヌーカー台の前で対戦相手を待つギイ。
 ギャラリーを掻き分け、そこへ現れたのは三洲だった。
 睨み合うギイと三洲。三洲のストロークから試合開始。



(29)駅
 駅に着き、ホームのベンチに座る託生。


 <回想>270号室 託生と三洲。
 先程の三洲の言葉が反芻される。
 「ところが俺は崎には一票も投じていない」
 「どうして?」
 何故なら、崎の外出許可申請が昨日の時点で撤回されていないから。 
 「月曜日の午前中に提出されたっきり、そのままになってるんだ」


 <回想>学校・学生課
  昨日の場面の続き。ギイの外出許可申請書を確認する三洲。
  提出されたその日付は6月9日月曜日の8:25。


 「どんな手を使ってでも外出する気だぞ、アイツ」
 自分が申請するよりも早く、ゼロ番の夜よりも前に外出許可を申請していたギイ。
 三洲は託生に電車の時刻の再確認する。
 11時半までは駅にいるかもしれないと。それを崎に教えてもやってもいいか、と。
 ゆっくりと頷く託生。
 「これで崎への貸し、三つだ」 


 託生ナレ
  ぼくとの約束より先に、とっくにそのつもりで、
  ギイ、本気でぼくと一緒に兄の所へ行こうとしていた?――



(30)
 スヌーカーで対戦するギイと三洲の様子と、
 駅で託生が何本もの電車を見送りながらギイを待つ様子とが
 交互に移り変わっていく。



(31)一年前、305号室
 貧血で倒れていた託生がようやく気がつく。
 そこへ食事を持って戻ってくるギイ。寝たふりをする託生。
 ギイは託生の横たわるベッドへ近づきそっと腰掛ける。
 「まだ起きるなよ、託生」
 上から覆い被さって、託生にくちづけるギイ。
 そのキスに託生は思わず応えてしまう。
 キスを続けるギイの身体を力一杯押し退ける託生。
 「嫌だ、ギイ!!」
 怯えたようにギイを見た託生は距離を取るように後ずさる。
 「どういうつもりだよ、やめろよ!!」
 力ずくで託生を組み敷きキスで動きを封じようとするギイ。
 振り払おうと藻掻く託生。再度両手を脇に押さえつけてギイは言う。
 「嫌だなんて言わせない。今わかった、この方がいいんだ」



(32)学校・スヌーカー大会会場
 最後のカラーボールをポットした三洲の勝利。
 大番狂わせに沸くギャラリー。
 ギイにだけわかるように三洲は微かに頷いてみせる。
 それを見取ったギイは慌てて会場を後にし、廊下を駆け出す。
 ギイの消えた方向をしばらく見つめ続ける三洲。
 そんな三洲の様子に気づく真行寺。
 そして赤池も、三洲の様子からなにかしらを察したように微笑む。



(33)駅、そして駅へと続く道
 駅のホームでギイを待つ託生。次の電車に乗らないと間に合わない。
 必死で走り続けるギイ。託生の元へと直走る。
 せつない表情を浮かべながら託生は一年前のことを思い出す。



(34)一年前、305号室
 「いやだよ、ギイっ」
 衣服を脱ぎ捨てながら託生の素肌を忙しなく這い回るギイ。
 託生は言葉で拒絶しつつも、ギイを押し返す腕の力はすでに弱い。
 くちびるにキスされて、それを受け入れまいと口を固く閉じる託生。
 託生の頑なな様子に、ギイがせつなげにそして悲しげに訊いた。
「オレじゃだめか? オレに抱かれるのはそんなに嫌か?」
 あまりに気弱なギイの言葉を聞いて、そのキスを受け入れ応える。
 本当はギイにすべてを晒したい託生。
 そのまま許してしまいそうになり、ダメだとギイと自分を押し留める。
「託生……」
 うわずった声で、託生の耳元に熱く囁くギイ。

 〝託生……〟
 ギイの声が兄のものとオーバーラップし、表情が強張る託生。
 今、自分を抱いているのが誰なのかわからなくなる。
 もたらされるものすべてに耐えようと自分の手を固く固く握り締める。



(35)駅・ホーム
 タイムリミットの11時半、電車がやってくる。
 電車を追うように向こうから走ってくるギイの姿。
 駆け寄ったギイは荒い息をしながら託生の手を掴んだ。
 そのまま二人で発車間際の電車に乗り込む。



(36)一年前、305号室
 苦痛に耐えるようにギュッと握り締められた託生の手。
 それに気づいたギイは、強張りを解こうと上から自分の手で包み込む。
 「なんて顔してるんだ、託生」



(37)電車のなか
 
 「オレの対戦相手、三洲だった」
 当日までわからなかった生徒会の枠に登場したのが三洲。
 容赦の無い責めで本気のギイが敵わなかったのだ。


 <回想>270号室
  「これで崎への貸し、三つだ」
 

 今朝、部屋で言っていた三洲の言葉が甦る。
 三洲の意図と自分たちへの思いやりを理解した託生。


 「ありがとう、約束守ってくれて」
 ギイの肩に頭を寄せて愛おしそうに寄り添う託生。安堵するギイ。



(38)一年前、305号室
 「なんて顔してるんだ、託生」
 やさしい声で、託生の意識を自分へ引き戻そうとするギイ。
 何度もまばたきして、自分を抱いているのが誰なのか確認する託生。
 そして託生はゆっくりとギイの背中に腕を回し、自分から抱き締める。


 託生ナレ
  ああ……このひとは、ギイだった
  無条件でぼくを大切にしてくれる、唯一無二のひとなんだ――



(39)一年前、305号室
 ようやく身も心も繋がった二人。
 素肌のままギイは託生を後ろから抱き締めている。
 満たされたような落ち着いた表情で託生は告白し始める。


 三年前に亡くなった兄のこと。
 両親の兄への溺愛と眼中に無かった自分のこと。
 そんな兄が自分にしてきたこと。抵抗しなかった、できなかったこと。
 兄が自分のことを話すときだけ両親の興味が自分に向いたこと。
 うれしくてたまらなかったこと。それを兄が利用していたこと。 
 

 「そして、あの日が来たんだ……」
 ギイが背後から回した両腕で託生をさらにギュッと強く抱き締める。


 兄との行為最中を母に目撃され、すべてを自分の罪にされたこと。
 兄の性格異常を両親が知るまで一年も誤解されたままだったこと。
 その頃にはどうでもよくなっていたこと。なにもかも諦めてしまったこと。
 「恨んでるのか、今も」
 「うん……多分」
 すこし不安げにギイを見上げる託生。
 「でも、ギイ、……ぼくを嫌いになった?」
 「オレ、愛してるって言わなかったか」
 一瞬泣きそうな顔になる託生。
 それでも安心したように託生は目を閉じてギイの腕に身を委ねる。



(40)一年前 祠堂学院のバス停前
 まだどこか迷いのある固い表情の託生。
 「行ってこいよ」
 ギイは笑って頷いて兄の墓参りへと送り出す。
 その向こうに広がっていたのは、晴れた青空。


 託生ナレ
  兄の墓参りへと、ぼくの背中を押してくれたギイ
  ギイのおかげでずっと避けていたあの場所へ行くことができたんだ――



(41)兄の墓所へと続く野道
 一年前、一人で歩く託生の姿に
 現在、託生とギイが二人で向かう姿がかぶさる。

 託生ナレ
  兄さん、ぼくはもう、兄さんを恨んでなんかない。もう大丈夫。
  だって、兄さんに胸を張って紹介できる大事なひとと一緒だから――



(42)兄の墓所
 兄の墓にはすでに両親の分の花束が供えられていた。
 託生も腕に抱えていた花束をその横に添える。
 しゃがみ込んで、兄の墓前でそっと手を合わせる託生とギイ。


 オーバーラップする一年前の託生。
 じっと立ちつくし墓をみつめたあと、花を供えても手を合わせることは
 できずに、膝を抱えてただ兄の眠る場所をみつめるだけだった託生。


 そして、今の託生。
 一年後の命日、6月15日。
 託生はもう一人じゃない。傍にはギイというひとがいて、
 両手を合わせて心から兄の冥福を祈ることができるようになった。
 目を閉じて一心に祈る託生を、いち早く祈り終えたギイがそっとみつめる。



(43)
 墓所に背を向けてゆっくり歩き出す二人。
 前を向いたままギイが手を繋いでくる。そして、託生に言う。
 「来年もまた来よう」
 「えっ?」
 来年もその次の年も、また一緒に来よう、とギイが言う。
 ……来年は、もう祠堂の学生ではない自分たち。
 ギイの立場では、日本に来ることさえままならないのかもしれない。
 そんな託生の気持ちを察して、力強くギイが言う。


 「世界のどこにいても、オレは来るから」


 しっかりと繋ぎ合わせ解けないようにと絡まり合う二人の指。
 だからそのとき、託生が両親とここに来られるようになっていたとしても
 それでもオレと一緒に来よう、とギイが言う。


 「来年も、再来年も、それから先も、ずっと、毎年オレはお前とここに来る」
 「……うん」
 

 手を繋いだまま、寄り添いながら、託生とギイは二人一緒に歩いてゆく。

 
 

エンドロール



(44)
 帰りの電車のなか、
 ギイの左肩に頭を寄せる託生。その託生の頭に頬を寄せるギイ。
 幸せそうな穏やかな表情で眠っている二人。


 「オレは本当の葉山託生を知っているんだ」


 <回想>一年前・305号室
  貧血で倒れた託生が横たわっているのをみつめながらギイが言う。
  ずっと昔、託生が本当に託生らしい頃の託生を知っている。
  その頃から、好きだった、と。
  すこし照れくさそうに微笑みながら、赤池に打ち明ける。


 「章三は笑うかもしれないが、オレは託生に憧れていたんだ」


 ギイの肩にもたれて眠る託生。その口元が柔らかくほころび笑う。
 〝ギイ……〟  




 線路を走る車輪の音だけが響く二人きりの車内で、
 託生とギイは寄り添い眠り続ける。


 電車はトンネルに入り、そのまま徐々に暗くなっていき……―end―











以上です。
今回はエンドロールのあとに特別にエピローグがあります。是非最後までゆっくりと腰を据えてお楽しみください。ラストの託生の笑顔は……本当に、本当に、最高に美しいですよ(号泣)!!



このあらすじを元に、次記事からはいよいよ青空感想をガンガンいきます!! 勿論ギイタク至上なワタクシらしい感想でお送りしますのでよろしく(笑)。


あ、これだけ先に言っておきますと、私、個人的には青空はラブシーン含めて美貌以上に大満足しておりますので。