100208
映画タクミくんプチコラムその2。
“ここが残念・映画版『そして春風にささやいて』”
もっとちゃっちゃと書いて更新するつもりだったのに
ここまで手こずった最大の理由は、映画版春風を
再度見直すのに途中3回も中断を挟んだことですな。
たかだか75分程の映画だろ?
嘘みたいだろ……
虹色と1分しか変わらないんだぜ、それでwww
いやーアレを一気見は正直ツライっす(;´ω`)
さて、気を取り直して。
今回の映画第三弾『美貌のディテイル』では
原作と映画第一弾の『そして春風にささやいて』からの
再現シーンというものがいくつか回想として挿入されています。
(1)二年生の入寮日、ギイと託生のシーン
(2)託生がギイを膝枕するシーン
(3)音楽堂でのギイの告白シーン
(1)に関してはシチュエーション、台詞はほぼ同じ。
(2)は、劇場版本編では残念ながらカットされてしまい
今現在はメイキングDVDのみで見ることが出来ます。
(3)は、映画版の1と3ではほぼ別物のシーンです。
まずは(1)二年生の入寮日シーン。
これは完璧に映画版春風のトレースですね。
では両者の同シーンを比較してみましょう。
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【春風版】
(305号室に荷物を運び込む託生。特に変わった様子は無い)
(部屋に何故か隙間無く配置された2台のベッドを見つめる託生)
(ギイ登場。特に立ち止まることなく右側のベッドに荷物を置く)
(その間、託生はギイの行動を見つめている)
「葉山ってさ、自己表現がド下手だな」
「え…っ?」
「もしくは」
(ギイ、託生を振り返って)
「人間接触嫌悪症だ」
「人間接触嫌悪症?」
「オレが今勝手に作った病名。なかなか上手いだろ?」
(託生に向かって微笑むギイ)
「……あっ、ごめん。急に用事思い出しちゃった」
(焦ったように逃げ出す託生)
(そんな託生を見てギイはうれしそうに微笑む)
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【美貌版】
(305号室のドアを開けて部屋に入ってくる託生。
ゆっくりと荷物がテーブルの上に下ろされる)
(感情の読めない、浮かない顔の託生)
(ギイ登場。ドアを開けたところで背後を振り返った託生と目が合う)
(託生を認めてハッとしたような表情のギイ)
(ギイを見て、慌てて視線を逸らし顔を背ける託生)
(どことなく気まずい空気)
(ギイは右側のベッドに荷物を置き、机の前に立って託生を見ずに)
「葉山ってさ、自己表現がド下手だな」
「え…っ?」
(俯いていた顔を上げてギイを見る託生)
「もしくは、人間接触嫌悪症だ」
(託生の方を向いて見つめるギイ)
「人間接触嫌悪症?」
「オレが今勝手に作った病名。なかなか上手いだろ?」
(返す言葉が出てこない託生)
(そんな託生を見て吹き出し声を上げて朗らかに笑うギイ)
(笑っているギイを目を丸くしてじっと見つめる託生)
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同じ台詞でも場面としての解釈が全然違いますね。
あ、美貌版に関しては私の記憶のなかの映像なので
ト書き部分の細かいところが間違っているかもしれません。
(大阪公開初日鑑賞後に修正します!!)
春風版の託生には、これから一年ギイと同室であることへの
戸惑いや躊躇いなどはあまり感じられません。
美貌版ではそのへん、よく表現されていると思います。
ギイとの部屋へ初めて足を踏み入れるときの託生の様子。
ギイと顔を合わせた瞬間の託生の反応。ギイの反応。
ギイの言葉、そして笑顔に引き付けられていく託生の表情。
どれも細かくカット割りして丁寧に撮られていると思いますね。
前にも触れましたが、原作ではこのシーンはありません。
「自己表現がド下手だな」と一年生の入学直後ギイに言われて
以来、託生は心のどこかでギイを追いかけていたのですが、
敢えてここで原作通りにはせず、春風版のトレースにしています。
これにはきっと制作側のなにかしらの思惑があるはずです。
いや、ストレートにコレで第一弾の塗り替え完了という意味なの?
シチュエーションと台詞が同じで、解釈や演出が異なると
両者の差が余計に引き立ちますよね、コレ。
まーたこのシーンの大ちゃんギイが上手いんだわwww
託生を見た瞬間の表情、笑い出す瞬間の表情、本当に素敵(≧∀≦)
次に(2)の膝枕シーンですね。
これに関しては 1/22付けの記事 にて検証済みですので
よろしければリンク先を参照なさってください。
このシーンにおける両者の最大の違いは一つの台詞の有無です。
他の生徒が普通に通るような場所で膝枕はさせねーだろjkとか、
まだキスもしてねーのにベタベタ触って嫌悪症どうしたwwwとか、
むしろただ単にギイと託生で膝枕を撮りたかっただけだろとか、
春風版に逐一突っ込みだしたら止まらないんですが(;´∀`)
ギイの「これだけで十分だから」を言わせない脚本に絶望した!!
膝枕シーンについてはパンフレットに気になる記述があります。
もしかして、もしかしたら、DVD版には膝枕、収録されているのかも?
こういうのはあまり期待せずに待っていた方がいいと思うんですが
パンフに書いてある文章はそのように読み取れるんですよね……。
ええい、DVDの詳細待ちだ!! いくらでも払うから中身充実でお願い!!!!
そして(3)は、これぞ美貌スタッフの本気を見た!!!!
春風版とは違い、ほぼ原作通りの再現シーンに仕上げています。
なんせ音楽堂のロケ地選びから気合い入りまくりですしねw
それではギイの告白シーン前後の比較です。
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【春風版】
(音楽室(音楽「堂」では無い)のグランドピアノの前で)
「だってぼくなんかより高林君はずっと顔は綺麗だし、
ぼくよりも全然人気もあるし…」
「馬鹿言え!! オレは託生が好きなんだ。お前以外の誰でもない」
(ゆっくりと距離を縮めて近づくギイ。託生は動かない)
(キスしようと近づけた顔を寸前で逸らすギイ)
(特に逃げようともせず受け入れかけていた託生)
「ごめん。オレは無理矢理したくない」
(横を向いたまま視線を落として)
「本当に託生がオレに心を開いてくれたときじゃないと、なにも出来ないよ」
「え…っ?」
(託生に向き直るギイ。そしてギイを見つめる託生)
「でも、これだけはわかってほしい。オレの気持ちは本当だ」
(返事はしないけれどまんざらでもなさそうな託生)
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【美貌版】
「逃げるな」
(託生の顔の右側に片腕をつくギイ)
「託生が今朝ヤツらに嫌がらせをされたのはオレのせいなんだ」
「えっ…」
「オレが託生を好きだと、高林が知ったからなんだ」
(それを聞いて託生、視線を逸らし逃げ出そうとする)
(逃がさないように左側にも手をつくギイ)
(ギイの両腕のあいだに閉じ込められる託生)
<中略>
「オレは託生が好きなんだ。お前以外の誰でもない」
(目を大きく見開いてギイを見つめる託生)
(間近な距離で二人は見つめ合う)
「後悔したくないんだ。託生が好きだ」
(ゆっくりと顔を近づけるギイ)
(託生は全身が麻痺したように動けない。
(そのまま触れるだけのキスをするギイ。
(託生は驚いたように何度もまばたきをする)
「オレを嫌いじゃ、ないだろ?」
(まばたきを繰り返す託生)
「……嫌いじゃないよな」
(もう一度、ギイの唇が近づく)
(託生の視線がギイを捉え、そして頷く代わりにゆっくりと目を閉じる)
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ギイの告白はどちらも同じ台詞、
「オレは託生が好きなんだ。お前以外の誰でもない」
なんですが、これはもうね……春風版、本当にヒドイ('A`)
原作に対して想い入れのある立場からみれば本気で許し難い。
なーにーがー「オレは無理矢理したくない」だあああヽ(#`д´)ノ
あのね、ここは無理矢理しないと駄目なんですよ。
託生とギイの“初めて” はキスにしろエッチにしろ
半ばギイから無理矢理じゃないと駄目なんですよ。
カッコつけて「託生がオレに心を開いてくれたとき」を待ってたら
ずーっとキスもエッチも出来ないまんまだぞ春風版ギイ!!!!
ギイが開かないと駄目なんですよ、こじ開けてやらないと
駄目なのよ!! 鍵を掛けて固く閉ざされた託生の心の扉をね。
これって原作一冊目だけでも読んだらわかると思うんですが
……春風の制作陣は原作読まなかったんですかね?
本気でそれを疑うぐらいこのシーンの重要性がわかってない。
そもそも音楽「堂」が音楽「室」に変更されてるのがありえない。
原作「そして春風にささやいて」のクライマックスって音楽堂でしょ?
それがたった3分ちょっとですっ飛ばされるなんて……絶望した!!
ここで原作通りキスしないのに、その後も原作からのエピソードを
無理に続けるから託生とギイの関係に居心地悪さを感じるんですよ。
観てる側からすれば「え?なんで?いつ恋人同士になったの?」って
思うよ普通。いつ想いを受け入れたんだよ?! って突っ込むね(`д´)
対する美貌版。どうですか?ほぼ完璧でしょうこの再現!!!!
気づいたら託生はほとんど台詞の無い回想シーンですが
その分託生の目が!! この場面、目がすべてを語っていましたよ!!!!
個人的に、ここでなにより秀逸なのは浜尾託生のまばたきです。
「パチパチパチ」って音がしそうなぐらいまばたきしてるんですよ。
それまではじっと目を見開いてギイを凝視していた託生が
最初にキスされた瞬間から、まばたきをして反応するんです。
まるでそれまで魔法をかけられて動けなかった人形が、
王子様のキスによって命を吹き込まれ感情を取り戻したような
そんなキュンキュンする萌えシーンになってるんです(≧∀≦)
人形だった彼は、一度目のキスで感情を得たからこそ、
二度目のキスのときはちゃんと目を閉じるんですよおおおお!!!!
この二度目のキスのときに目を閉じる託生、台詞も無いしギイに
頷きもしないけど、ちゃんとギイを受け入れたんだなってわかる。
勿論この場面、大ちゃんギイの台詞回しも最高でした!!!! 惚れた!!!!
これは多分今だから言えることですが、映画版春風は、
「そして春風にささやいて」のエピソード一本だけで作るべきだった。
話題的にベッドシーン入れたいなら百歩譲って「June Pride」までで
カレーを投げつけるのはちゃんと野沢 野崎(修正しました!!)で、
ギイと野崎の持久走勝負はちゃんと授業中のスポーツテストで、
6月の不安定だった託生と初エッチは原作通りきっちり演じてもらう。
とにかく「裸足のワルツ」のエピはどうみても完全に要らなかった。
相葉君の井上佐智という話題性のために強引に突っ込んだんでしょうが
映画全体を通しても佐智絡みのエピソードの浮き感が半端無いです。
あとロケーションがチープというか手垢付いた場所で済ませすぎ。
祠堂学院というファンタジー空間が、他の実写BL作品と同じ場所じゃ
その瞬間に観てる側は一瞬醒めますよね。「あ、××と同じだ」って。
タクミくんシリーズはおとぎ話に近いファンタジーだと思っています。
決して単なるイケメンB★Lパラダイス、では無いんです('A`)
大前提のそこを読み誤ったのが映画版春風の敗因だと思います。
でもその反省点が虹色のロケーションに生かされたのだとしたら
試金石となった第一弾はやはり必要だったのだと言えるでしょう。
相変わらずただぐだぐだ長いだけでまとまらない内容ですが
ディープな原作読者としてやりたかった映画版春風への駄目出しを
ようやく書けました。……まだまだまだ言い足りないんですがね。
次回は最後の5分、に関する個人的萌えチェックポイントなどをw